病院におけるDX推進の事例

こんにちは。kintone(キントーン)導入支援のギャンです。
今回は「病院におけるDX推進の事例」というテーマで、病院におけるDX推進の事例についてご紹介させていただきます。

病院におけるDXとは

DXとは

DXとは、デジタルトランスメーションのことで、2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマンが考えた言葉だそうですが「IT(情報技術)の浸透が、人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる」=「デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変わること」の意味です。経済産業省はDXを「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と位置付けており、デジタル化によってトランスフォーメーション(変革)させるのは、製品、サービス、ビジネスモデルだけでなく、業務、組織、プロセス、企業文化・風土までを変革し、DX推進により競争上の優位性を高める仕組み作りを行うことを目指しています。

病院DXの定義

病院DXの明確な定義はありませんが、病院における「医療DX」ということで、病院へのシステム導入や病院のペーパーレス化といったデジタル化にとどまらず、病院においてデジタル化によって病院という組織及びそこで働く医療従事者や病院職員の業務に変革を促し、ひいては医療の質の向上に繋がる変化を起こすことを「病院DX」と定義いたします。

医療DX
医療DXとは

医療DXとは厚生労働省では、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えることと定義できる。」と定義しています。

背景

医療DXの背景として「世界に先駆けて少子高齢化が進む我が国において、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向け、医療分野のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護含む)の利活用を積極的に推進していくことは非常に重要。また、今般の新型コロナウイルス感染症流行への対応を踏まえ認識された課題として、平時からのデータ収集の迅速化や収集範囲の拡充、医療のデジタル化による業務効率化やデータ共有を通じた医療の「見える化」の推進等により、次の感染症危機において迅速に対応可能な体制を構築できることとしておくことが急務。」と説明しています。

方向性

医療DXの方向性としては「国民による自らの保健・医療情報(介護含む)への容易なアクセスを可能とし、自らの健康維持・増進に活用いただくことにより、健康寿命の延伸を図るとともに、医療の効率的かつ効果的な提供により、診療の質の向上や治療等の最適化を推進。また、今般の新型コロナウイルス感染症流行に際して開発された既存のシステムも活用しつつ、医療情報に係るシステム全体として、次の感染症危機において必要な情報を迅速かつ確実に取得できる仕組みを構築。さらに、医療情報の適切な利活用による創薬や治療法の開発の加速化により、関係する分野の産業振興につながることや、医療のデジタル化による業務効率化等により、SE人材を含めた人材のより有効な活用につながること等が期待される。」と考えています。

医療DX令和ビジョン2030

厚生労働省は「医療DX令和ビジョン 2030」を掲げ、推進チームを設置しました。既に病院間での患者情報の共有やPHRなど、国や自治体、医師会など大きな枠組みでも医療DXに関する取り組みが進んでおり、オンライン資格確認(マイナンバーカードの保険証利用)やオンライン診療などは着実に前へ進んでいます。また電子カルテの標準化(Webサービスの技術を用いて医療情報を交換する際の国際標準規格であるHL7FHIRを活用し、まずは診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果報告書の3文書と、傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方の6情報を対象に標準化を進めている)、診療報酬の改定DX(診療報酬の改定による負荷を軽減するために各レセコンベンダ共通のものとして活用できる「共通算定モジュール」を導入し、診療報酬改定の際も、当該モジュールの更新を行うことで実施できるようにするもの)についても検討が始まっています。

病院DXの現状

では、病院におけるDXの現在の状況はどうでしょうか?近年、病院内にDX推進室を設置したり、DX担当者を配置するなどして、DXに取り組んでいる病院が増えています。しかし病院のデジタル化の代表である電子カルテの導入率は2019年7月時点で400床以上の大病院で76.9%、200〜399床の中規模病院で48.5%、100〜199床で33.1%、20〜18.3%といった状況です。(電子カルテシステム等の普及状況の推移より)中小病院においては、電子カルテさえ未導入というDX以前にIT化、デジタル化さえ進んでいない病院もたくさんあるのが現状です。電子カルテについては、2030年までに導入率100%を目指していますが、まだまだ時間はかかると思われます。また、現状、電子カルテは導入されていても、カルテ以外の病院内の情報については、紙(書類)やExcelで管理されているところが多く、職員同士のコミュニケーションも会話が中心でデジタル化されてない病院がまだまだたくさんある状況で病院のDXはあまり進んでいません。

参考:医療分野の情報化の推進について |厚生労働省

病院DXが進まない理由

現在、多くの病院でDXが進んでいない理由は以下が考えられます。

IT人材の不足

病院のDXを進めるにはIT人材が必要ですが、病院のスタッフは医療のプロである専門職の割合が高く、ITツールやデジタル技術の知識や経験が豊富ではありません。情報システム部門などIT要員の人材を配置することができない病院も多くあります。

予算の確保が難しい

病院のDXを進めるうえで情報システムの導入が必要になりますが、一般的な病院の収益性は決して高くなく、病院のDXにかける予算の確保が難しいという現状もあります。限られた予算の中でどうやって病院のDXを進めていくかという点が課題です。

多職種連携が必要

病院では患者へ医療サービスを提供するために、多数の職種が連携する必要があります。しかし、多職種連携を前提にした医療システムは非常に少なく、それぞれの部門システムにおける連携には様々な障害があるのも病院のDXが進まない理由のひとつです。

医療データ形式が標準化されていない

電子カルテ等で管理される医療データ形式の標準化が進んでいないため、データの二次利用を行うことが難しい状況がありこれも病院のDXが進まない一因となっています。

病院におけるDX推進の事例

病院にDXを導入することで医療現場の人手不足問題の解消が期待されます。DXを導入することで医療現場の効果が出やすい業務としては、「定例業務の中でデジタル化されていない業務(手作業で行っている業務)」、「報告書や申請書など情報共有が紙で行われている業務」がありますが、これはほとんどの病院においても当てはまるのではないでしょうか。病院DXが進まない理由に挙げた課題や病院スタッフの過重労働をなくすため、病院のあらゆる業務の改善や生産性向上といった課題については、サイボウズの業務改善プラットフォーム「kintone」を導入することにより改善が期待できます。病院のDX推進を実現するための道具(ツール)としてkintoneは非常に有効です。以下に病院DXの事例を10件ご紹介いたします。

事例①病院のペーパーレス化の実現

慢性期の中小病院のDXの事例ですが、この病院では月1回、経営会議が開催されており、前日までに各部署がExcelで作成した資料を事務長へ提出し、当日、資料を印刷、配布し、資料を見ながら各部署から報告を行うというスタイルで経営会議が行われていました。これを各部署ごとの報告内容に合わせたアプリを作成しダッシュボード形式にまとめて表示できるようにしました。また、データについては、電子カルテ、レセコンから集計できるものはデータ連携を行ないました。これよって、紙の資料は完全に廃止され、ノートPCと接続したプロジェクターでダッシュボード画面をスクリーンに大きく映しながら経営会議は実施されるようになり、病院のペーパーレス化を実現しました。DX事例の詳細については「病院のペーパーレス化をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例②ワークフロー業務改善

200床規模の急性期病院のDXの事例ですが、こちらの病院では職員からの各種届出、申請(休暇申請、残業申請、購入申請、稟議申請、出張申請、精算申請、押印申請など)が全て紙で行われていました。また、承認については押印も必要でしたので、提出してから最終承認されるまでの時間もかかり、書類が途中で行方不明になることもあるなど管理にかなりの手間暇がかかっていました。そこで各届出、申請ごとにそれぞれアプリを作成、それぞれに適切なワークフローを設定しました。こうして紙で行っていた届出、申請についてはすべてアプリで行えるようにしてペーパーレス化とワークフロー業務のDX化を実現しました。DX事例の詳細については「病院のペーパーレス化をkintone(キントーン)で」、「病院の購入申請業務の改善をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例③業務日報の電子カルテ連携

200床強のケアミックス病院のDXの事例ですが、従来、院内の各部門に於いてExcel(エクセル)で業務日報を作成、紙として提出されていました。毎日、業務終了時に、検査科であれば、検査種別ごとの検査件数を、放射線科であれば各撮影件数を集計され、それを業務日報に記載、押印のうえ事務長へ提出されており、それぞれの部署でかなりの手間=時間がかかっていました。そこで電子カルテと連携することで件数のカウントや集計の手間がなくなり、自動で集計された結果の確認を行い、コメントを入力し、ボタンクリックするだけで上長へ報告が完了するようになりました。1日15分程度の業務改善ですが、月間にすれば7.5時間、年間にすれば90時間、それを各部門で実現しましたので、十分な費用対効果を得ることができました。さらに副次的な効果として、日々のデータが蓄積されていきますので、集計を行い統計・分析することも可能になりました。DX事例の詳細については「病院の業務日報をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例④レセプトデータの二次利用

中小病院でのDXの事例ですが、従来、医事会計システムの統計データを元に、医事課において、Excelを利用されて、集計、分析を行っていましたが、かなりの工数が必要でした。これを医事会計システムの統計機能を用いて月次の診療実績のデータをCSV出力、それを集計してアプリに取り込むようにしました。こちらの病院では日別かつ診療行為別のデータが出力できましたので、細かい分析が可能となるようなアプリを作成、毎月、レセプト提出後に医事会計システムの統計データを集計し蓄積しました。さらにそれをグラフ化することで売上全体及びそれぞれの内訳(入外別、病棟別、診療科別、医師別、診療行為別)ごとの推移を把握できるようにしました。またデータをドリルダウンすることで売上の増減の要因の分析も可能としました。DX事例の詳細については「kintone(キントーン)で売上管理」、「病院の経営分析をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑤地域連携室の業務改善

地域包括ケア病棟と療養病棟をもつ100床程度の病院のDXの事例ですが、こちらでは地域連携室でFAXで送られてきた診療情報提供書のコピーをとり、それを複数の医師に渡して、受け入れ可能か否かを判断していました。そのため医師の状況によっては確認に時間がかかり、紹介元病院への回答に数日を要してしまい、受け入れ可能の連絡を入れた時点で他の病院での受け入れが確定してしまっているなどの機会損失が度々発生していました。そこで入院相談アプリを作成、一覧を閲覧しただけで進捗状況が分かるようにし、診療情報提供書のPDFをクリックすると画面上で確認でき、受け入れ可否の入力までできるようにしました。これによって迅速に紹介元へ回答できるようになり機会損失がなくなり稼働率が向上しました。また退院調整についてもアプリ化することで関連部署との情報共有により円滑なベッドコントロールを実現しました。DX事例の詳細については「入院相談をkintone(キントーン)で迅速化して病床稼働率向上」、「退院調整(ベッドコントロール)をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑥病院内の情報の共有化

地方の60床程度の小規模な療養病院のDXの事例ですが、この病院では医療区分2と3割合が50%をぎりぎり超えている状況でしたので、療養病棟入院基本料2を算定していました。病院として本来は療養病棟入院基本料1を算定したいと考えられていましたが、小規模な病院のため専任の地域連携室担当者も配置できない状況で、病床の稼働を確保することで精一杯の状況でした。そこで、電子カルテとの連携プログラムを作成、毎日、電子カルテから入院患者の医療区分及びADL区分を取得しデータを蓄積し、それをポータルのお知らせに貼り付けるようにしました。それによって病院全体で現状を把握できるようになったことで、職員の意識改革という効果もあり、月を追うごとに医療区分2と3割合は向上しました。半年後には療養病棟入院基本料1の基準である80%を超えるようになり、1年経過後には90%を超える月もあり、安定して療養病棟入院基本料1を算定できるようになりました。また、病棟の稼働状況についても同様に病院全体で共有できるようにしたことで、稼働率の向上も実現しました。DX事例の詳細については「施設基準の管理をkintone(キントーン)で」、「入院状況の共有をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑦病院のインシデント管理

中小病院のDXの事例ですが、インシデントレポートについてExcel(エクセル)や紙で管理されており、各部署からインシデント発生後にレポートが上がってきて、それを医療安全員会でとりまとめて確認、分析、集計などの作業を行われており、通常の業務の傍らかなりの時間と労力がかかっていました。そこでインシデントレポートのアプリを作成、レポートの作成から提出、承認についてはワークフローを設定しペーパーレス化を行いました。また、医療安全委員会における集計、分析についてもアプリ化することで、業務にかかる人的工数の削減を実現しました。DX事例の詳細については「インシデント・アクシデント管理をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑧複数病院のデータの集約

都道府県を跨いで2つの病院を経営されている医療法人のDX事例ですが、経営者である法人の理事長は常に1つの病院内におられますので、その病院については院内で情報共有されていましたが、もう1つの病院についてはまとめられた資料で報告を受けるという状況でした。両病院間はVPNは導入されていないため、デイリーでの病床の稼働状況などは相互にわからない状況でしたので、それぞれの病院に電子カルテ連携プログラムを設置し、データを集約するようにしたことで理事長は2つの病院の稼働状況や施設基準の達成状況などを把握できるようになりました。DX事例の詳細については「医療介護グループの一括管理をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑨複数病院の報告書フォーマットの統一

同一都道府県内に病院を3つ(それぞれ別の医療法人)経営している病院グループでのDX事例です。こちらは全ての病院がVPNで接続されていましたが、経営資料は各病院ごとに異なる形式でそれぞれの病院ごとに取りまとめされており、それを本部で集めて経営層へ提出されていました。そこで本部に電子カルテ、レセコン連携プログラムを設置し、データを集約するようにしました。それによってそれまでバラバラだった日報、週報、月報のフォーマットが統一され、微妙に異なっていた施設基準の計算もすべて同じ計算式で出力されるようになり、病院間の比較もできるようになりDXの推進を図ることができました。DX事例の詳細については「医療介護グループの一括管理をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

事例⑩病院と介護施設のデータ集約

同一都道府県内で1つの病院と複数の介護施設を経営されている医療法人のDX事例です。こちらは介護施設が非常に多いために、月ごとの売上の集計に時間がかかることが課題でした。拠点間はVPNで接続されていませんでしたが、介護システムがクラウドシステムのため、中核となる病院内に電子カルテ、レセコン、介護システムとの連携プログラムを設置し、データを集約するようにしました。毎月のレセプト提出後に集計を行い、病院と介護施設の売上がすべて集計されて医療法人全体の売上と医療、介護それぞれの売上、さらに病院、介護施設ごとの売上を見える化を実現しDXを推進しました。DX事例の詳細については「医療介護グループの一括管理をkintone(キントーン)で」を参照下さい。

病院におけるDX推進の事例のまとめ

今回、様々な病院のDXの事例をご紹介いたしましたが、このDX事例のようにkintoneを導入すれば、様々な業務アプリ=システムを作成できますので、新しくそれぞれの業務システムを導入しなくても病院全体のDX推進が可能となります。またDX事例にように業務改善を実現することで、病院スタッフが手間のかかる事務作業ではなく、本来の医療業務にかける時間を増やすことができるようになりますので、その結果として医療の質の向上を図ることが可能になりDXを実現できます。

弊社はDXを推進したい病院を後方から支援させていただきたいと考えていますので、お気軽にご相談ください。